新しいタイプのブラケット
歯の配列に使うマルチブラケットという装置があります。全ての歯に接着させて、ワイヤーの力で歯を動かすしくみです。(一般に矯正治療というとこの装置を連想する方がほとんどです。)歯を動かすときの、ワイーヤーとブラケットの摩擦が歯の動きを阻害したり、痛みに関連することが知られていて、この摩擦を少なくするブラケットが多く開発されています。私が大学卒業後在籍していた、鹿児島大学歯学部矯正学講座の伊藤学而前教授の開発されたブラケットは、この発想の魁ともいえるものでした。ただ金属製のものが主流で審美性(目立たない装置)の点で劣っていました。この2-3年で新しいタイプの、めだたなくしかも摩擦の少ないタイプのブラケットが登場し、当医院でもここ1年間使用をはじめています。オームコ社製のデーモンブラケット(Damon system),トミーインターナショナル社製 クリッピー(世界ではGAC社製 In-Ovation C)です。治療初期においては歯の動きは速く、痛みが少なく患者さんの評価は高いように感じます。あらたに3MUnitek社製のCLARITY SLという製品も登場し、従来の矯正装置のイメージを一新しつつある感じがします。近年ではインターネットの普及で、患者さんが装置の種類を指定されるということも経験するようになってきました。ただ矯正治療に於ける歯の移動には様々な段階がありますし、後戻りのない治療のためには、ある程度の治療期間も必要です。これらの装置によって治療期間が劇的に短縮するわけではないと思いますが、無理や無駄のない治療の可能性が広がっていくように感じますし、痛みの少ないことは患者様にとっては福音だと思います。さらに、治療をすすめて報告をしたいと思っています。
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